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自分の子供を育てる日が来たら、必ず親の心を理解できるだろうと自分を慰めた。
その息子がまたしても事後報告である。今後は家を建てるという。私も息が止まった。聞けば二十五年ローンである。ローンから解放されるとき七十歳に近い。考えた末の決断であろう。頭のなかには二十五年の歳月の青写真が組立てられているに違いない。息子の巣作りも、これから本腰になるだろう。親としては、途中で修正することがないことを祈るのみである。

 

 

直幸を信じ我にむち打つ

川城和子
千葉県
ある夏の日の午後、主人の実家の前の通りで車の流れを眺めていると、十メートル先の十字路に向かって右からオート三輪車、左からオートバイが、ブレーキをかけるような音もなく突っ走ってきた。その瞬間、気がついたときには私は、直幸の兄博英(当時二歳)を抱きかかえたまま横たわり、オートバイが後ろの溝に落ちていた。直幸は妊娠五ヵ月。「大丈夫ですか、

 

 

 

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